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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜レボリューション

草間 一露

 

 年末年始には我が家でも例に漏れずお餅を食べていたが、終盤になるとお雑煮やお汁粉、海苔醤油などオーソドックスな味には流石に飽きがくる。贅沢にもそうぼやいた高校生の頃、母がデザート代わりに作ってくれたアレンジレシピ。それこそが『蜂蜜バター餅』であった。
 作り方はとっても簡単。まずは切り餅を四分の一サイズにカットし、バターと一緒に柔らかくなり焼き色がつくまで炒める。最後の仕上げに蜂蜜を上からたっぷりかけて染み込ませれば完成だ。
 蜂蜜といえばホットケーキにかけるもの、という漠然とした印象しか持っていなかった当時の私は、弾力と仄かな甘みのあるお餅にしっとりと絡みつく蜂蜜のマリアージュを新鮮に楽しんだものだ。更にお好みで黄粉をかけると、蜂蜜の滑らかさと黄粉のざらりとした食感が口の中で混じり合ってなんとも堪らない。一度食べたらやみつきになり、年末が訪れるたび母に作ってとせがんだ。しまいには率先して自分で作るようになり、お雑煮に続く我が家の正月恒例メニューに昇格した。
 そもそも蜂蜜が戦前、明治維新前、遡れば平安時代から嗜好品として扱われていた日本伝統のソースである、という歴史を知らなかった当時の立場からすると、蜂蜜とお餅のような和菓子はパッと結びつけづらい傾向にあった。他の家庭がどうかは知る由もないが、『はちみつ』と言うとなんとなく洋風の、御伽話のお茶会などによく出てくるイメージが拭えなかったのはどうしてだろうか。この先入観を抱いていた頃は抱いていた頃で楽しかったが、視野ならぬ舌野を狭めていたのは確かだろう。もっと早くに蜂蜜バター餅と出逢えていれば、実家にいるうちにもっと蜂蜜を色々なものに使って更なる味の可能性を追求できていたかもしれない。もしかすると母は既にその「追求」を行っていて、何も知らないまま蜂蜜入りの料理を食べさせられていたかもしれないけれど。
 実家を出て一人暮らしを始めてからはもう3年目に差し掛かる。自炊のためスーパーへ行き、ついでに製菓コーナーを覗くと、実家に常備されていたものと同じプラスチックのチューブと大抵目が合う。
 誰かや何かにおすすめされた食べ方もいいけれど、調味料代わりに買っておかずに混ぜてみるのもありだろうか。今度は自分の手でイメージをまた一つ打ち砕いてみたい。新たな蜂蜜の美味しさと出逢うために。

 

(完)

 

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